利休にたずねよ


タイトルから想像していたのとは違い、静かな小説。

利休の切腹の日から始まり、関係するいろいろな人を主人公とした連作。利休の並外れた美的感覚が表現され、茶の湯がどのように展開されていったが書かれていきます。

ほとんどの章に、緑釉の香合が繰り返し現れ、ある女性と関連があることがほのめかされます。利休はこの香合はほとんど人には見せず、高麗のものということも隠しています。さらに、壺には女の人の小指と爪が入っている。

茶道は戦国時代だからこそ発展したものだということに改めて感じ入ります。秀吉の気に入らなければ簡単に首を刎ねられる。そんな緊張感の中で、狭い空間で茶を飲む。

茶室のあの入り口は、当時でもやっぱり不自然に狭いものだったんだ。というか、敢えて狙って狭くしているんだ。茶室に入れば、位の上下もなく、対等に接するといったことは今でも聞くけれど、まだ誰も見たこともない狭い茶室を作ってそこに秀吉を呼んで、さらに感心させてしまうのは確かにすごい。

最後の章で、香合に秘められた謎は明かされます。正直に言うと、このエピソード自体は、突発的な事態に若気の至りで反応してしまった出来事で、あまり深みは感じません。でも、社会に出る前の若者にとっては、一生忘れることのできない重荷になっていたのでしょう。


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