宇多田ヒカルの作り方


竹村光繁 著 宝島社新書

1999年に出た本。本棚に眠っていたのをやっと読んだ。

そういえば、宇多田ヒカルが大流行していたこの時期、特に音楽業界の重鎮を自任している人たちが、あんな子供の歌のどこが面白いのかわからない、みたいなことを言っているのをよく聞いた。正直、少なくとも公共の場でそれを言うのは、自分の評価を落としているよな、と嫌な気分になった。でも、それだけ衝撃が大きかったんだったんだろう。

一方で、日本人離れしたリズム感とかニューヨーク出身の天才少女とか絶賛もされていて、この本の前半は、そんな大げさな誉め言葉も的外れで、曲つくりは基本に忠実でわかりやすいんだけど、センスが飛び抜けているんだと説明される。

でも議論は、まず小室哲哉の批判から始まる。高すぎるキーの設定と意味のわからない歌詞。金儲けが優先で音楽をダメにしたと。著者は、音楽関係者がアホで、レコード会社の人たちは音楽のことがわかってないと、かなりいらだっている。

その後、一章を使ってアルバム「First Love」が全曲解説される。歌詞から曲の魅力を説明しようとしているようだが、ちょっと表面的な感じがしてしまうのが残念。歌詞をそのまま1ページ以上書き出しておいて、解説は数行だったり、小室系への文句だったり。

そして、議論は教育に移る。宇多田ヒカルを生み出したのは、父親が褒めちぎって自由に育てたからだと。ちょっと自慢話が多いのと、業界へのいら立ちを表現するときに言葉使いが荒くなるのが気になるが、言っていることはわかる。趣味の音楽つくりの参考にできるかと思って読み始めた最初の期待とは違う内容だったけれど、あの時代を思い出して楽しく読めた。


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